最近、壬生さんの〔先〕が焼き物からでてくる。和食屋のルールからみるとちょっと違うかな?と感じるが、今までなぜそんなルールに縛られていたのだろう?と思う。
5月9日 火曜日
本日午前中、壬生へ行く。
5月の献立 【宇宙心】―――如来の心、宇宙の心ありがとう。
最近、壬生さんの〔先〕が焼き物からでてくる。
和食屋のルールからみるとちょっと違うかな?と感じるが、今までなぜそんなルールに縛られていたのだろう?と思う。
本日の〔先〕は、かれいを柏の葉に見立てて出された。
一番美味しいものを一番先に、お腹がいっぱいにならないうちに。
本当に美味しいかれいでした。
次に〔椀〕
白だつに雲丹。壬生の椀ほど品格があり、そして凛としている椀は他にないだろう。
〔向〕も趣向が凝らされていた。菖蒲湯。杉のわっぱに湯が入っている。
上に乗せてある菖蒲をちぎって入れて香りを嗅ぐ。
壬生は必ず我々になにかをさせる。そうして食の遊び心を愉しむ。
〔煮〕初茄子をあさりで炊いたものの翡翠仕立て。
そして大豆。炒った雷豆と煮豆を入れてある。
そろそろ雷が鳴る季節。カリカリと豆を食べる。
〔揚〕実に大きな白鱚。懐紙にはさんでいただく。これが壬生流。
上手に食べられると骨がきれいに残る。まるで標本の如き。
残念ながら私はうまくいかなかった。
しかし、本当に美味しくなんて上品な味なのだろう。
〔強〕バラ水に浮かんだウドの白和え。
うどの輪切りにピンクのバラの花。そこに白和えがかかっている。
これをバラ水に浮かべるとは。
〔飯〕鯵のにぎりはちまきの如く。実にすっきりと堂々としている。その上にはまぼうふがちょん、とのっていた。
〔菓子〕ふたつの柑橘。香りよし。
もうひとつは山芋と小麦粉の焼き餅。そこに蓬の葉がうめ込まれていた。
お抹茶で〆です。
本当にこの料理をいただけることに感謝です。
そうそう、設えは毘沙門天が天邪鬼を足で押さつけている。800年はたっている木彫もの。そのお顔が素晴らしい。そして社は茅葺き。菖蒲と蓬が屋根に飾られていた。
菖蒲は香りが強いので厄除けでしょう。
旧暦では今は梅雨の時期。この時期は疫病が流行るので、蓬で毒消し。解毒作用があるものを食したのでしょう。
日本の文化は奥が深い。壬生は料理も素晴らしいが、その文化を感じられることが嬉しい。
皆々様には壬生の素晴らしさだけのご報告だけで申し訳ない。
それと同じ例えとして、ロールスロイスのオーナーも少し似ていることを語る。
ロールスロイスは素晴らしい車だ。しかし何百回話しても、理解できない人には解らない話だろう。まして運転してみたらとってもよい。
「ベンツでも国産車でもいいよ」―――そうです。その通り。
一回乗ってもわからない。まして一回運転しただけでもわからない。
雨の中に、スーっと乗りつけたときのボディの光沢。貴婦人がどしゃ降りに打たれた如く艶っぽい、雨の日のロールスロイス。
ロールスロイス、数多く一緒に過ごすことによってその素晴らしさがわかってくる。
英国人職人が磨きあげて作りあげたウォールナットのコノリーレザーのシート。
意外に余計なものがない。素晴らしい職人スピリットが伝わる。
自分で所有し共有することが好きなのだ。これは所有している人間にしかわからない良さなのだろう。
あぁ不思議な車、ロールスロイス。
壬生も、ここで食事をとる人間にしかわからないすばらしさがある。
ロールスロイスも壬生も、その良さを説明すればするほど鼻もち悪くなってしまう。
本日、壬生にて感じたこと。




