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2008年1月16日 (水)
(2)国産農産物に、いま猛烈なフォローの風が吹いている(つづき)

齋藤訓之(さいとう・さとし)
ライター。外食記者から農業記者へ転身後、フリーに。中小企業としての外食業経営から、農作物、生産農家の最先端までを幅広く取材。本コラムでは理想論からは見えない、農業と外食が連携できる現実的な未来とは何かを、現場記者の立場から問う。
農家とWin-Winの関係を築けるか
一方、食品メーカー、小売業、外食業などの需用者 は、買うのが上手と言えるでしょうか。それぞれの会社に、農産物の目利きはいるかもしれません。市場で野菜を上手に選んでくる料理人もたくさんいます。で も、本当に使いたいものを生産地に入り込んで作ってもらうことができる人は少ないものです。
農村に足を向けるバイヤーも確かにいます。でも、多 くの農家は、都市からバイヤーが来るとまず警戒します。農家の多くが、農業以外の仕事をしている人を「商人」と呼びます。農家と話をしていて感じるこの語 のニュアンスは「よそ者」であり、「安く買って高く売るずる賢い連中」というものです。たいへん残念なことですが、「人をだます相手だから、こっちがだま し返しても当然だ」と考えている農家もいます。栽培技術や経営の先進性で国から表彰されるような、“立派な”農家にさえ、います。
しかし彼らを
責めるわけにはいかないかもしれません。それは、1000年、2000年の長い歴史の中で培われた、農家が生き抜くための勘の一つだからです。問題は、そ
の歴史を乗り越え、農家の心を開くことが、一部の優れたバイヤーにはできているにせよ、食品メーカーなり、小売業なり、外食業なりが、業界としてはできて
いないということです。
かくして、農家は売れるチャンスを目前にし、需用者は作ってもらうチャンス、買えるチャンスを目前にしながら、なかなかものが動かないというのが現状です。
ここで、もし食品メーカー、小売業、外食業に、こんな人が現れれば、状況は変わるのです――すなわち、日本の農業の状況をよく理解し、個別の地域に行けばそこの状況を正しく分析できる人。買いたたきに来たのではなく、お互いのベネフィットをお互いに創造し合うWin-Winの関係を築きに来たのだと、なるべく早く理解してもらい、相手にもそうした働きを促して、実際にそうできる人。農産物だけでなく、農家を見て、圃場を見て、倉庫を見て、その農家の人となり実力を見抜ける人。実力に応じて、取引を始めたり、実力が不足な人には、実力を引き上げるチャンスを作れる人。
かなり難しく思えるかもしれません。しかし、どの産業でも、優れた会社にはこのような役割を担っている人がいるものです。かけ離れて感じられるかもしれませんが、例えばトヨタ自動車は、あの会社が単独で出来ているのではありません。優れた中小企業集団をパートナーとして持ち、各パートナー企業が自発的に技術開発や効率経営に取り組めるような関係を築き、最終的な製品像をパートナー企業と共同で作り、それに必要な部品を各パートナー企業が生産し、その関わりの全体で“トヨタ”というブランドを作ってきたのです。また、食品に関する分野にも、少数ですが、農家とそのようなパートナーシップを築いてる例はあります。それは回を改めて具体的に紹介することにします。
外食の本業専心が農業を変える
今回は茨城県のある地域のことを例に取り上げましたが、このように積年の歪みから農業がうまく行かなくなり、何かをきっかけに新しい生産の体系を築く必要に迫られている地域は、日本中にあります。これまでは、行政がそれを何とかしようとして来ましたが、行政が得意でないこと、制限がかかることもあります。ものの売り買いの具体的な道筋を付けることは、その最たるものです。
本来、その部分を最も得意とするのは、食品メーカー、小売業、外食業です。「日本農業を活性化する」と言って、自ら農場を持ったり、営農をすることもいいかもしれませんが、その前にやること、より影響力の大きなことはそういうことではありません。今、フォローの風が吹いている国産農産物を使った売れる商品を企画し、それを農家に理解してもらい、それを実現できる優れた農産物を生産してもらうことです。
この取り組みをするには、大企業である必要はありません。農家には、外食業と同じく、大規模な経営の人もいれば、家族経営の人もたくさんいます。それぞれの規模同士で、身の丈に合った関係を築くことと、その成功体験で得られたノウハウを同業者間で共有することで、日本の農業や食の市場を大きく変えていくことができるのです。
この冒険に役立つ情報をなるべくたくさん用意したいと思います。このシリーズへの要望など、ぜひどしどしお寄せください。
コラム担当:ライター 齋藤訓之(さいとう・さとし)
2008 01 16 | 固定リンク