松井春澄×プロントコーポレーション竹村典彦社長対談(その2)
松井春澄 国内では今度どんな展開を?
竹村社長 プロントはあと100店舗はできるだろうと考えていますよ。たとえば関西はまだまだ少ないし、もっと目立つ立地に出したい。主要立地に打っていく。「ソラーレ」は完全に商業施設対応の業態。原宿がレアなケースなだけ。いま16店舗で、利益の伸びも一番いい。これから伸びると思いますよ。
松井春澄 コックレスであれだけできるって、本当にスゴイと思う。
竹村社長 スゴイですね。
松井春澄 包丁がないんですよね。
竹村社長 そう。果物ナイフはありますけどね。
松井春澄 プロントさんとはわたしも2回ほど、お仕事をさせていただいたんですけれども、提案はできるんですけど、全店舗分の生産の仕組みに落とし込むまでには、時間がかかるんですよね。前提条件も多いですし。
竹村社長 アイデアは皆いっぱい持っていたり、外部の方からも頂戴するんだけど、それを実際に落とし込む作業というのが、一番難しい。原価、物流、オペレーションのやり方ね。
プロントでは、まず商品の提供スピードが大事なんです。時間がかかってしまうのは、導入できない。それから、当然、素人がつくれること。そこまで落とし込むのに時間がかかる。
いま、これが流行っているからウケるだろうと思っても、商品完成まで落とし込むのに時間がかかるから、時差が出る。でも、いままでその時差が半年かかっていたけれど、3ヶ月ぐらいにはなってきた。スピードアップはどんどんやっているわけです。
こんどの7月8月は、ブラジル移民100周年を記念してブラジルをフェアを考えています。次は9月のことを考えている。年間で大きなテーマだけ決めて組んである。
それからプレミアムコーヒーのPRね。豆がエスプリドサントスといって、プレミアムコーヒーなので、バナー広告で「プレミアム、それ以上のもの」という打ち出しをする予定。スペシャリティコーヒーですよと。スペシャリティコーヒーの定義は、豆の氏素性がはっきりしている、つまりトレースができること。しかも、それが一級の生産地である。精製方法、焙煎が抜群であること。その定義をはっきりとする。
それと、ありえないことをやる、という意気込みなのが「錫マグ」。(注:前回竹村社長が手にしているマグです)
ビールの「銅マグ」というのをプロントが最初に始めたんです。ビールが最後までおいしく飲めるというので、ヒットした商品。その次にもっと熱伝導のいい「錫」を使って、マグをつくることにしました。デパートだと1万円ぐらいするマグをあえて導入。大阪の伝統工芸なんですが、その工場に行ってデザインや大きさを決めて発注したものです。何がいいかというと、2年経ったら、鋳つぶして新しい形にできる。同じ材料でどんどんリサイクルできる。
それに高級店でなくチェーン店でこれを使うのが画期的でしょ。
松井春澄 すごいですね。容量は?
竹村社長 300mlです。見た目より入るでしょ。ものすごいおいしいよ。テストしたんだけど、評判もすごくいい。今年は、これで生ビールの品質徹底管理をして、「ビールはプロントで飲むのが一番旨いな」という評判を立てましょうという運動をしている。FCオーナーにも、京都・桂と武蔵野にあるサントリーのビール工場を見てもらって、研修をする。店長も研修する。生ビールを最高の品質の状態で飲める店になるための研修ですね。6月から。こんなバカな運動をするチェーンないでしょ(笑)。
松井春澄 (笑)。それはいいですよ。
竹村社長 錫はやわらかく加工しやすい素材なんですよ。ロゴも入ってる。
松井春澄 これ、持って帰っちゃう不届きな人もいるのでは。
竹村社長 そうね。その恐れはある。ものすごく高いものですから。でも店の従業員が注意して、テーブルをよくウォッチすることで、他のことも気づきがあっていいんじゃないかな。
松井春澄 さて、将来プロントをどうしていきますか。
竹村社長 いままでいろんな競合があった。でも、二毛作で残ったのはうちだけ。なぜかというと、昼の顔と夜の顔では、オペレーションが全然違う。かたやセルフ サービス、かたやフルサービス。しかも、夜の人材と昼の人材もまた、キャラクターが違う。それを融合させる難しさというのがあって、なかなか他企業がマネし にくい点。うちの特徴であり強みです。
カフェ&バーというのはプロント、ということを日本全国に知らしめていく。エッヂのきいた業態としては「イリー」があるし、もっと大衆向けならば、違う 業態もあるだろう。それから、いま立ち飲みが流行っているけど、チェーン化しているところはない。今後うちがチェーン化をしようと思って今年、「イルバー ル ディ・プント」業態をつくりました。
丸の内オアゾと東京駅八重洲の銀の鈴の横にある店は、月坪100万円を売り上げている。考えられないぐらいの売上げ。そういうバーが当たったからといって、1・5等立地の田町などに出したんだけど、とたんに売上げが下がる。
何が要因か?
隣の赤ちょうちんには勝てないということです。
1等立地だと、商圏の絶対人数がいるから、夜のバー、昼のコーヒーで成立するけれど、ちょっと離れた立地ではやはり食事メニューが必要になる。そこで 500度のオーブンを導入した。スクラッチでピザを焼いたり、オーブン料理を増やしてフードを充実させた。それから日本で初めて5.5気圧の炭酸装置を開 発して導入した。ビールのディスペンサーみたいな方法でジントニックがつくれるんです。それを全国展開しようと目論んでいるところ。
松井春澄 5.5気圧って、すごいですね。ディ・プント(句読点)という名前は社長がつけられた?
竹村社長 いやメンバーです。なかなかいいでしょ。ネーミングは大事よね。もともとプロントの理念とは職場と家庭を結ぶジャンクションであるということ。それに通じるものもある。
開発メンバーはアメーバ組織にしています。その都度、プロジェクトメンバーを指名して、立ち上げさせる。性別や年齢はそのプロジェクトによって違いますよ。
ソラーレは女性だけ、ディ・プントはアラサー(30歳前後)から団塊ジュニアまでしか集めていない。それ以上の人は僕も含めて、いっさい口を出すなと決めた。商品も、環境や音楽もデザインもいっさい、彼らに選ばせた。
たとえばポスターが壁に貼ってあるんだけど、わざときちっと貼ってない。少しよれた感じに貼ってたんです。それを僕は、糊がはがれてるんだと思って会議
で糊はがれていいのかと問題にしたら、「何を言ってるんですか、社長。初めからああいうタッチでやってるんです。計算してやってます」といわれて、安心し
た。すごくうれしかった。
松井春澄 口出しちゃダメなんだ、という話ですよね。ちょっとさみしい?
竹村社長 いや、全然さみしくない。ものすごくうれしいね。なぜなら、僕はプランナーとして、自分もそういうことばっかりしてきたから。だから、次の世代にそ れが受け継がれたということだからね。社長と組織の関係って、これからはトップダウン一辺倒じゃない。組織のもっている力を引き出す存在が社長。そういう 時代じゃないかな。
[今回のゲスト]
竹村典彦 (たけむらのりひこ)さん
1958年12月生まれ/奈良県出身
1981年3月 同志社大学 法学部 卒
1981年4月 サントリー株式会社入社
1990年3月 ル・マエストロ ポールボキューズ トーキョー 総支配人就任
1991年3月 株式会社ミュープランニング゙アンドオペレーターズ設立 取締役就任 1997年9月 不動産免許を取得とともに不動産事業部設立 専任の取引主任者就任
2000年8月 商業施設士免許取得 ショッピングセンター等の企画業務に携わる
2002年9月 同社 専務取締役就任
2004年4月 株式会社ミュープランニング゙アンドオペレーターズ 取締役副社長就任
2005年3月 同社取締役副社長辞任 同社取締役就任
2005年3月 プロントコーポレーション 代表取締役社長就任
[案内人]
松井春澄(まつい・はるみ)
(株)食楽 代表取締役社長
静岡県生まれ
1990年、飲食店の総合コンサル企業会社、株式会社ミュー・プランニング&オペレーターズに入社。 様々な飲食店の業態開発、メニューコーディネートの仕事に従事。
2006年5月に独立、株式会社食楽を設立。
現在は、レストラン、居酒屋、ファーストフードなど異なる飲食店業態からスーパーマーケット、食物販のコンセプト提案など幅広く手がける。
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